感動のフルオーケストラで「FF」サウンド25周年の締めくくり!スクウェア・エニックスは12月26日、東京国際フォーラムにて「Distant Worlds THE CELEBRATION」の東京公演初日を開催した。
【拡大画像や他の画像】
「Distant Worlds THE CELEBRATION」は、「ファイナルファンタジー」(FF)シリーズ25周年を記念し、「FF」サウンドをフルオーケストラ演奏で楽しむワールドコンサートツアー。ロンドン公演、シカゴ公演に続き、今回12月26日の公演が日本公演の初日となった。今後は12月29日に大阪公演、そして12月31日にも再び東京公演が行なわれる。
今年の「FF」25周年を締めくくるオーケストラコンサートの模様をお伝えするとともに、公演後に行なわれた植松伸夫氏、水田直志氏、アーニー・ロス氏、クリスタル・ケイさん、スーザン・キャロウェイさんの5人に伺ったインタビューの模様も掲載しているので、ぜひご覧頂きたい。
初代から最新作まで「FF」サウンド25周年を最高の形で楽しめるコンサート!!
「FF」25周年ということもあり、今回の「Distant Worlds」は「FF」初期作品のメドレーから始めて、最新作「FINAL FANTASY XIV」まで、各作品より1曲を演奏して順に進んでいくという構成。それに加え、オーケストラコンサートならではのオペラやコーラス、ボーカルのある曲をプラスアルファに交えていくというスタイルだった。
なお、公演内容の詳しいセットリストは、本レポート掲載のタイミングでは後日にまだ公演があるので、来場される方の楽しみを損なわぬよう、本文中では一部を除いて伏せておきたい(記事の最後に公演データとセットリストを掲載しているので、プログラムのネタバレを避けたいという方はご注意を)。
曲目についてぼかしつつ書くと、「やっぱりこの曲だよね」という定番もあれば、「この曲もいいですよね! 」という曲もある。また、オーケストラという印象からおとなしめの曲が多めかと思いがちだが、バトル曲や、ちょっと変わった曲もある。構成に緩急があって非常に楽しめる内容だ。
オーケストラ演奏をするのは、神奈川フィルハーモニー管弦楽団。指揮は「Distant Worlds」のツアーではおなじみだが、グラミー賞受賞歴もある音楽家アーニー・ロス氏が務めた。その生演奏の良さ、ホールの響き、そして何より楽曲の良さは、格別に贅沢な時間を与えてくれる。
音楽と同時に、映像も非常に見応えのあるものになっていた。演奏中のタイトル、そして曲にまつわる名シーンが連続して流れるよう構成されており、リンクさせている。選出しているシーンやその見せ方は非常に凝っていて、映像制作者の愛情が感じられるレベルだった。やはりゲームプレイの思い出と共に音楽の記憶があるので、この演出は嬉しい限りだ。
曲の間にはアーニー・ロス氏が次曲の紹介などを話してくれるのだが、数曲終えたところで客席の中央あたりを指さした。なんとそこには、植松伸夫氏の姿が! 隣にはスクウェア・エニックスのコンポーザーであり、「FINAL FANTASY XI」シリーズを代表に多数作品の曲を手がける水田直志氏の姿も見られた。客席に混じって楽しんでいたわけだ。
ちなみに植松氏は、第1部と第2部の間にあった休憩の時に、周囲のお客さんに何かを話していた。後ほどインタビューの際に伺ったところ、第2部からは曲が終わったあとに「良かったと感じたら、大きな声で『ブラボー!』と言ってあげてもらえない?」と、植松氏のコンサートでは恒例になりつつある“ブラボー係”を指名していたそうだ。第2部の演奏終わりにはブラボーの声が挙がり、一層の盛り上がりを見せていた。後日の大阪公演や大晦日の東京公演に行かれる方は、ぜひブラボーの声をめいいっぱいに伝えてもらいたいと思う。
ナンバリングシリーズを順に辿っていき、最新作「FINAL FANTASY XIV」では、植松氏作曲のテーマソング「Answers」が演奏された。この曲でボーカルを務めているスーザン・キャロウェイさんがソリストとして登場した。壮大さと同時に世界崩壊の悲壮さを感じさせるこの曲は、スーザン・キャロウェイさんの伸びやかな歌声がなんと言っても印象に残る。オーケストラの生演奏に負けぬ声量で、たっぷりと歌い上げた。
最新作まで歴史が追いついたところで、続いてはコンサートならではの趣向が凝らされた特別曲へ。そのひとつ「Eyes on Me」では、日本でも人気アーティストのクリスタル・ケイさんが登場! 王菲(フェイ・ウォン)さんが歌う元々の曲もオーケストラサウンド調たが、この生演奏ではひと味もふた味も音が伸びやかに密度濃く聞こえてくる。そこにクリスタル・ケイさんは、アレンジを加えつつたっぷりの声量で原曲よりも強く、ホール中に響かせるように歌い上げた。そのパワーと透明感は圧倒的。会場はこの日、最も大きな拍手に包まれていた。
もうひとつ、特殊な趣向が凝らされていた楽曲を紹介したい。それは「FINAL FANTASY VI」より、マリアとドラクゥの「オペラ」だ。完全版と銘打たれた今回のオペラは、オーケストラ演奏に、ナレーターでオペラ中に綴られる物語を、そしてメゾソプラノ、テノール、バスバリストンでマリア、ドラクゥ、ラルスの歌詞を歌う。まさに完全版だ。
もともとこのオペラは、初代スーパーファミコン版では歌声を入れたいものの「マシンスペック的なところから到底不可能だ」と、苦肉の策の疑似音声で収録された曲。それが「FF」25周年を迎え、ついに「完全版」になったというのは、感無量なものがある。本式のオペラで綴られる「マリアとドラクゥ」は圧倒的に豪華で、もはやゲームミュージックを超えている。だが、当時ゲームプレイした場面が次々に浮かんでくる。本格オペラとオーケストラに圧倒されつつも、どこか頭の中ではゲーム中のオペラを思い出しているという、不思議な高揚感があった。
こうして、約2時間半で25周年の「FF」サウンドを味わいつくし終了した東京公演初日。それは非常に贅沢で、最高の時間だった。年末のこの時期に、この1年を思い出すどころか、「FF」シリーズを楽しんできた想いの全てが駆け巡るような、そんな時間だった。忙しい毎日の中で忘れそうになる大切な何かを思いだしたかのような、そんな清々しい感動が筆者の中にあった。
それは来場した方もみな同じだったのか、アンコールを含めて全楽曲の演奏が終わり、ステージ場から全員が退場してもなお、激しい雨のような拍手は、退場を促すアナウンスが流れるまで何分も何分も、ずっとずっと鳴り止まなかった。
(C)2012 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
初日公演後の5人にインタビュー!
公演終了後に、植松伸夫氏、水田直志氏、アーニー・ロス氏、クリスタル・ケイさん、スーザン・キャロウェイさんの5人に伺ったインタビューの模様をお伝えしよう。
――まずは皆さんから一言ずつ、日本公演初日を終えた今の感想を頂けますか?
アーニー・ロス氏:日本で「FF」の25周年を祝えた事がとても嬉しいです。今回の公演はロンドン、シカゴでもやりましたが、やはりこの日本でできたということが、すごく嬉しいですね。
植松伸夫氏:「FF」っていうタイトルに長い事関わってきて、ずっとそばにあったので、25年というのも実はピンと来なかったりもします。昔のドット絵時代の映像も今回たくさん流れていたけど、さすがに「歴史のあるゲームだなぁ」とは思いますね。25年だもんね。あっという間でした。生きてて良かった。
水田直志氏:すごくたくさんのお客さんが早くから行列を作っていて。植松さんが積み上げてきた歴史というものを感じました。これが25年の重みなんだなぁと心に刻んで、明日から曲を作り続けていきたいと思いましたね。
クリスタル・ケイさん:凄く緊張してました。ロンドンでもものすごく緊張していたんですけども……。25周年という、こんなに歴史があって世界中の人が愛しているゲームの曲を歌わせてもらえるということで、すごく嬉しくてビックリしたんです。でも、プレッシャーもすごく感じていたんですよね。オリジナルのイメージがみんなの中にありますから。植松さんからは「クリスタル・ケイのVer.でお願いします」と言ってもらえて、自分のフレーバーを出しつつ、「Eyes On Me」の良さを壊さないように頑張りました。オーケストラで歌うという機会もなかなか無いですから。1つひとつの瞬間を大事にしています。あと2回(大阪・東京公演)ですね(笑)。
植松氏:クリスタル・ケイさんって演る度にアレンジがどんどん自分流に変わっていってるんで、全公演が終わってからアルバムの録音をすれば良かったね(笑)。
クリスタル・ケイさん:えー!(笑)でも、それはありますね。凄く楽しくて、このメンバーでもっとやりたいです。もうすぐ終わっちゃうと思うと寂しいですね。
植松氏:来年もやりますか(笑)。
スーザン・キャロウェイさん:この日本での公演に参加できて、心から嬉しく光栄だと思っています。植松さんが作り、アーニー・ロスさんが指揮した中で歌える事は本当に素晴らしいです。これからもこういった機会をいただきたいなと思いますね。
――今回はクリスタル・ケイさん、スーザン・キャロウェイさん、そしてオペラとボーカル曲もふんだんにありましたね。そのあたりはいかがでしたか?
植松氏:そうですね。みんなそれぞれに面白みが違っていて、嬉しかったですね。全部、歌いりの曲でコンサートをやりたいぐらい。「Melody of Life」とか、「Kiss Me Good-Bye」とか、「素敵だね」とか。ずらーっと一気にやってみたいね。できると思うんですよね。歌入りのみの構成でも。スクウェア・エニックスさんをつついてみます(笑)。
――今回のコンサートでの選曲では、どんなところにこだわられたのでしょう?
植松氏:例えば「片翼の天使」はやらないとガッカリっていう人がいると思うので。あとはもちろん「プレリュード」もそうですよね。あと、「オペラ」は凄く盛り上がるので。そういう省けないものは入れています。
あと、今回は25周年だから、やはり「FFI」から並べてみたいっていうのがありましたね。皆さん思い入れのある曲は違うだろうから、「このタイトルからはこの曲なの?」というのもあるかもしれないけど、どれもそのタイトルを代表する曲には違いないですから。
――クリスタル・ケイさんとスーザン・キャロウェイさんのお2人に伺います。それぞれが歌われた曲については、どんな感想をお持ちですか?
スーザン・キャロウェイさん:「Answers」は自分にとってとても思い出深い曲になっていて、最初に歌った時から大切に思っています。そして、この曲がゲームを遊んでいる人に大事にされているということを知って、ますます「大切に歌わないといけないな」と思うようになりました。
曲の中にはストーリー性もあります。それは戦いであり“世界の終わりから次の世界への始まり”を象徴する曲でもあります。そのあたりも大事にして、100%のパフォーマンスを常に発揮しなければならないと、全力で歌っています。
クリスタル・ケイさん:私もスーザンさんと同じです。「Eyes On Me」は、本当に“純粋なラブソング”なんだなぁって思うんですね。私がその気持ちを持ったキャラクターになりきって、歌って届けるという事を大事にしています。
ロンドン公演ではじめて歌った時、オーケストラが流れて、歴代の映像が流れて、それを見ているお客さんを見ていると、その空間から長年のゲームに対しての情熱や愛情をすごく感じたんですね。1曲1曲、聴いている人たちの中にも物語があって、大切に思っていると思うんです。私もパフォーマンスしている内に、その気持ちに届くよう、その人の中にある暖かさを取り入れて届けたいと考えています。
――今後にもっとチャレンジしたい事というのはありますか?
植松氏:やっぱり、海外で公演するともっと自由な盛り上がりができるんですよ。それをなんとか日本でもやりたいですね。例えばシカゴでは「ハッピーバースデイ」を急遽歌ったりしたんですけど。
アーニー・ロス氏:休憩中に突然決めたりして、それを本当にやってしまう事がありますね。
植松氏:そういうことを日本でもやりたいんですよ。ハプニングとか、突発性のある面白さ。日本でコンサートやるのって何年かに1回っていう頻度だから、そういったことがやりづらいところが、まだあるんですね。そういうことを突然やっても、来てくれているお客さんは許してくれるかなぁ?
――きっと大丈夫です。むしろ、何かやってくれるのを待っていると思いますよ。
アーニー・ロス氏:オーケストラコンサートでも、スクリーンに歌詞を表示してみんなで歌ったりとか。毎日違う内容でやってみたりとか。色々とアイデアがありますよ。やってみたいですね。
――もっと自由なスタイルをということですね。水田さんからは、植松さんという先輩を見て感じるものはありますか?
水田氏:ありますね。僕は今40歳なんですが、植松さんが40歳の時には「Eyes On Me」を作曲して大ヒットになっていたそうです。僕は同じ年齢ながらまだまだと、プレッシャーを感じるところがありますよね。遠くにある背中ですけど、がんばって追いかけたいです。
植松氏:ふふふ、俺って文字通り先輩だからね(笑)。水田さんは同じ高校の後輩なんですよ。
――えー! それはまた凄い。本当に先輩の背中を追いかけている状態なんですね。
水田氏:がんばります(笑)。
――後輩というお話がでましたが、ゲームミュージックが好きで自分でも音楽活動をしているような若い方に聞くと、「FF」のバトル曲に影響されているという人もたくさんいるようです。植松さんから、そういう若い人へ、何かアドバイスをもらえますか?
植松氏:そんな人がいるんですね。ろくな大人にならないよ?(笑)。「FF」の音楽以外にも良い音楽はたくさんありますから。ゲームミュージックに限らず、ジャズもロックもクラシックも、プロを目指すなら色々と聴いた方がいいと思いますね。
あと、若い音楽家を目指している人にいつも言う言葉があるんですけど、自分の作った曲が100%高く評価されるということは無くて、必ず誰かに何かを言われる。例えば、「この曲って○○に似てるよな」みたいなこととか。そういう時、何を言われても心が折れてしまってはダメ。何を言われてもへこたれない、強い自分を持たないと。意外と、才能よりも図太い精神というほうが大事かもしれない。絶対に諦めないでもらいたいですね。
――ありがとうございました。
(C)2012 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
「Distant Worlds THE CELEBRATION」公演データ&セットリスト
【東京公演】
日程:2012年12月26日(水)18:00開場 / 19:00開演(予定)
2012年12月31日(月)17:00開場 / 18:00開演(予定)
【大阪公演】
日程:2012年12月29日(土)17:00開場 / 18:00開演(予定)
【主催】
キョードー東京・キョードー大阪
【協力】
スクウェア・エニックス
作曲: 植松 伸夫 / 水田 直志 / 崎元 仁 / 浜渦 正志(出演情報ではありません)
指揮: Arnie Roth
ソリスト: Susan Calloway / Crystal Kay
メゾソプラノ: 太田悦世
テノール: 渡邉 澄晃
バスバリトン: 押見春喜
ナレーター: 郡正夫
オーケストラ:【東京公演】 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
【大阪公演】 関西フィルハーモニー管弦楽団
コーラス:【東京公演】 Real Singers of Tokyo(RST)
【大阪公演】 DWFF Osaka Choir
セットリスト
【第一部】
1. 「FINAL FANTASY I~III メドレー2」(FINAL FANTASY I~III)
2. 「ゴルベーザ四天王とのバトル」(FINAL FANTASY IV)
3. 「ファイナルファンタジーV メインテーマ」(FINAL FANTASY V)
4. 「迷いの森」(FINAL FANTASY VI)
5. 「片翼の天使」(FINAL FANTASY VII)
6. 「Don't be Afraid」(FINAL FANTASY VIII)
7. 「独りじゃない」(FINAL FANTASY IX)
8. 「ザナルカンドにて」(FINAL FANTASY X)
9. 「チョコボメドレー2012」(FINAL FANTASYシリーズ)
【第二部】
10. 「Procession of Heroes ~ Vana' diel March Medley」(FINAL FANTASY XI)
11. 「東ダルマスカ砂漠」(FINAL FANTASY XII)
12. 「閃光」(FINAL FANTASY XIII)
13. 「Answers」(FINAL FANTASY XIV)ソリスト:スーザン・キャロウェイ
14. 「愛のテーマ」(FINAL FANTASY IV)
15. 「Eyes On Me」(FINAL FANTASY VIII)ソリスト:クリスタル・ケイ
16. 「オペラ マリアとドラクゥ(完全版)」(FINAL FANTASY VI)
【アンコール】
17. 「バトル & 勝利のファンファーレ メドレー」(FINAL FANTASY シリーズ)
18. 「ファイナルファンタジー」(FINAL FANTASY シリーズ)
【GAME Watch,山村智美】
fdhsjfhdjksfdsfjjRelated articles: